早めに「本番」を経験して目線を高くする
前項で「入試1年前に本命校の過去問を1回分行うのが理想的」と書きましたが、四谷大塚は「入試同日体験受験」という企画を2015、2016年の2月1日に実施しています。開成、桜蔭の入試問題に新6年生が挑戦するというもので、私が教えている生徒さんも参加しましたが、正直、これは良い企画だと思います。
入試1年前に難関校の入試問題を解くわけで、普通は合格点にはほど遠い結果しか出ません。「そんな無謀なことをしても自信をなくすだけ」「過去問は直前期まで取っておきたい」という考えで、この企画を敬遠する受験生も多いと思います。確かにそういう考えも否定できないですし、企画に参加することが裏目に出る(自信を喪失するなど)かもしれません。
ただ厳しい言い方をすれば、もしこの企画で自信を喪失して頑張れなくなるのであれば、能力的な問題はさておき、性格的には難関校受験に向いていない可能性があります。
難関校受験生にとって、入試1年前に「本番」を経験するメリットの1つは「早めに現在地を確認できる」ということです。
例えば普段の模試で好成績を取っていると、無意識の内に慢心してしまいがちです。しかし入試1年前に本番の問題を解くと、合格ラインまでには圧倒的なキャップがあり、今後1年間で気が遠くなるほど実力を上げていく必要がある、という現実を突き付けられます。
大半の難関校受験生は、6年後期に学校別模試や過去問演習で現実を突き付けられますが、それを半年以上早く経験することになります。6年前期を「慢心した状態」と「緊迫感のある状態」のどちらで過ごすかによって、学習の質は大きく違ってきます。
もう1つのメリットは「目線が高くなる」ということです。「他の難関校受験生とは少し違う次元で勝負できるようになる」と言い換えてもいいかもしれませんが、これは大きな武器になります。
例えば、私は受験生の解法を見て「その問題を解く分には良いけれど、ある程度以上のレベルの問題には苦しくなる。こちらの解法も習得しておく方が良いよ」と伝えることがあります。
このアドバイスは、普通の受験生には響かないことが多いのですが、「本番」を経験して目線が高くなった受験生は熱心に聞いて実践してくれる傾向があります。
適切な例えになるか分かりませんが、一流のスポーツ選手が国内大会で優勝しても「こんな内容では世界大会で通用しない」と考え、さらに改善しようとする意識に近いかもしれません。