時間度外視の学習には再現性がない
受験指導をしていて感じるのは、時間の制約に無頓着な受験生があまりにも多いということです。
例えば、筑波大学附属駒場中学の算数は、問題自体も易しいわけではありませんが、難しさの本質は40分という制限時間にあります。問題を変えずに制限時間を60分にすれば、試験の難易度は一気に下がります。
筑駒の大問1の(1)を20分かけて解いて「筑駒の問題が解けた」と言って喜ぶのは、4年生くらいであれば意味のあることですが、5年生以降にその感覚を持っているのは危険です。
大半の受験生は「問題が解けたかどうか」という目線を持っていますが、難関校受験に成功する受験生は、その目線に加えて「一定の時間内に解けたかどうか」という目線も持っている傾向があります。
一定の時間内に解けたかどうかは、結局のところ、再現性があるかどうかということにつながります。難関校合格者の多くは、その目線を持つことで再現性のある学習を行っています。
普通の模試は多くの場合、50分の制限時間で約30問、つまり1分40秒で1問を解くという作りになっています。
自宅学習で、ある問題を10分かけて解けたとします。その類題が試験に出た場合に1分40秒以内に解けるのであれば「再現性がある」ということになりますが、どうでしょうか。
10分かけて解けたということは、それなりに苦戦したはずです。たまたま正解にたどり着いたという可能性もあります。その類題を短時間で解ける可能性となると、決して高くはないでしょう。
一方で同じ「解けた」でも2分で解けた問題は、類題が試験に出た場合に1分40秒以内に解ける可能性は十分にあります。
2分で解けたということは、十分に理解しているはずです。理解している上に、既に経験した作業(処理)を再現するだけなので、普通は少し時間が短縮できるはずです。逆に2分以上かかる可能性の方が低いでしょう。
私は家庭教師で課題の確認テストをする際に、例えば1問5点満点とすると、2分以内に正解したら5点、2分を超えて4分以内に正解したら3点、4分を超えて正解したら1点、といった採点をすることがあります。
この採点方法には、時間度外視の正解・不正解による評価ではなく、類題が試験に出た場合に対応できるかどうか(再現性があるかどうか)によって評価するという意図があります。
理解の状況が「時間をかければ解ける」というレベルだと、この採点方法では40点前後の結果になることがあります。逆にこの方法で80点以上とれている受験生は、多くの場合、模試でも突出した成績を残しています。
時間を意識することは、すべての受験生にとって必要なことですが、特に難関校受験生は強く意識していく必要があります。