後手の対策はハンディキャップになる
受験生の親御さんが学習法や教材の情報を集める際に、どういう方法、どの教材という意識はあっても、どのタイミングで行うかという視点を欠いていることが少なくありません。
例えば「プラスワン問題集」は非常に良い教材で、難関校受験生が早い時期(5年後期など)に仕上げれば、大きな成果が得られます。しかし遅い時期(6年後期など)に行う場合、得られる成果は限定的なものになってしまいます。
「プラスワン問題集」が扱っている問題は良問ですが、最新の入試傾向は反映されていません。そのため「算数の土台」を作る目的には適していますが、難関校受験生が入試直前期の仕上げに使用するという目的には向いていません。
同じ学習法、教材でも、どのタイミングで実施するかによって、そこから得られる成果は大きく違ってきます。特に近年の難関校受験では、プラスワン問題集の例に限らず、早いタイミングで取り組んで成功する例が増えています。
塾業界でも「早めに仕上げる」という方針が主流になりつつあります。一例として、「予習シリーズ」のカリキュラム変更が挙げられます。
数年前までは、サピックスは他の首都圏大手塾(四谷大塚、日能研など)より半年ほど早い進度でした。しかし、そのサピックスが難関校受験で圧倒的な実績を挙げていることもあり、四谷大塚は(おそらくサピックスを意識して)「予習シリーズ」をサピックスと同程度の、早期完成のカリキュラムに変更しました。
もともと教材として使用者数が最も多い「予習シリーズ」の進度が早くなったことで、大手塾だけに限らず、中学受験生全体の平均の進度は一気に早くなりました。
また、サピックス生は他塾生に比べて自主課題(中学への算数など)に積極的に取り組む傾向がありますが、その内容を見ていても、同じ教材を使用するタイミングは、ここ数年間で確実に早くなっています。
以前は「先手の対策が有利になる」という状況でしたが、今では「後手の対策が不利になる」という状況に変わりつつあります。「先手必勝」ではなく「後手必敗」と言える状況かもしれません。
学習法や教材の情報を集める際には、その内容だけでなく、どのタイミングで実施するべきかという情報も同時に集める必要があります。