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更新日 2021-02-06 | 作成日 2011-06-01

純粋な思考力勝負は厳しい

開成、筑駒、灘などの最難関校に合格する受験生は思考力や発想力が抜群で、初見の問題でも簡単に解いてしまうというイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。特にその最難関校の上位合格者にもなると、どんな難問も一瞬で解けると思われているかもしれません。

そのような受験生も存在するとは思いますが、都市伝説に近いというのが私の実感です。例えばサピックスには6年生が5,000名ほど在籍していますが、その中に数名程度ならいるかもしれないという印象です。

実際、私が家庭教師で深く関わってきた中でも、サピックスで突出した結果(4科目の総合成績で1位または1桁順位)を残した生徒さんが直近7年間で5名いましたが、決して「誰も解けない難問を解いてしまう」というタイプではありませんでした。

彼らに共通しているのは「バランス感覚」が優れていて、結果的に効率的な学習をしているということです。例えば、難問に取り組む際に一定の時間をかけて最善は尽くしますが、必要以上の深追い(時間無制限で考え続けるなど)はしないという感じです。

難問に時間無制限で取り組み、純粋に思考力を鍛えていくという方法を否定するつもりはありません。それを続けていくことで、初見の問題にも強くなるでしょう。

前者(時間制限あり)は適度に思考力を鍛えつつ、適度に解説も読んで知識(解法)を効率的に増やし、守備範囲を広げていくという方法です。一方、後者(時間制限なし)は自力で考え抜くことを重視して、純粋な思考力で勝負するという方法です。

前者で成功する受験生は「秀才型」、後者で成功する受験生は「天才型」と言って良いかもしれません。いずれの方法が正しいということはなく(一般的には後者が賞賛され、前者が批判されることが多いかもしれません)、1980~1990年頃の中学入試では後者の成功例も多かったのではないかと思います。

ただ現実的な話として、今の入試では後者の方法での成功率は低くなっています。上手くいった場合に大成功する(灘に算数で受験者最高点をとって合格したり、算数オリンピックでメダルをとるなど)可能性があるのは後者の方かもしれませんが、失敗するリスクは高くなります。

「プラスワン問題集」で有名な望月俊昭先生は、今の算数の入試問題について「算数オリンピックのファイナル経験者が初めて解いて30分以上かかる問題でも、解き方を知っていれば誰もが5分で解ける、ということがいつも起こる」(「中学への算数(2012年4月号)」より抜粋)と発言されています。

今の入試問題は「解法を知らなければ(普通は)解けない」という性質の問題が多くなっています。もちろん難関校の場合は「解法を知っていれば合格できる」といったレベルではありませんが、解法を知っていることが最低条件で、そこから先(定番の解法から外れた部分)の思考力勝負という感じになります。